行為音楽に就いて

好意が好意を生むように行為は行為を生んで行く。
音楽と彫刻の類似点の一つに、生成の可能性の多彩さがある。どういった所からでも、
どのようにでも、ある手順さえ丁寧に踏んで行けば、作品として成立させる事が出来る。
しかし、成立の時間に関しては大きな隔たりがある。音楽の方が、より早く成立してしまう
のだ。それは表現媒体の特性の違いで、音楽は、種類はどうあれ、基本的に聴覚との関
係が第一になるのに対して、彫刻は、人によって優先的に反応する感覚がまちまちになっ
てしまうからである。これは単に特性だが、無自覚でいると表現は伝わって行かない。
しかし有効に活用出来れば、表現の強度は増して行くあろうと思われる。私は、彫刻の
構造を音楽へ置き換えて作品化するのだが、成立の時間の幅が、少し彫刻寄りになり
がちであった。音楽としての成立を、極端な早さで行う事か出来れば彫刻と音楽が捩れ、
彫刻/音楽/彫刻・・・・となる瞬間を、明快に開示できるのではないだろうか。そう考え、
音の発生から、音楽化、彫刻化、音楽/彫刻/音…までを文字通り一気に行う、
行為音楽を行う。

                                                 市川武史